研究概要
背景:
我が国における透析導入患者数増加の要因は明瞭である。現在、年間4万人強が新規に透析導入に到り、約33万人が透析療法を余儀なくされている(右図)。透析医療に要する年間医療費は総額約1.5兆円にのぼり、医療費を大きく圧迫している。糖尿病性腎臓病(DKD)と腎硬化症の2 疾患が経年的に増加しており、その臨床像は多様化しており特にDKDの約10%は急速に腎機能が低下し透析に至る。両疾患増加、病態多様化の背景には、遺伝要因に加えて、環境要因、加齢などが関与しているため予後予測は容易ではない。日本腎臓学会はこれらの課題を克服するべく、大規模慢性腎臓病データベース(J-CKD-DB)の構築に成功している。
本研究では、遺伝的素因の解析としてのゲノム解析に加えて、環境要因・臨床情報(J-CKD-DB)と代謝異常の解析(メタボローム解析)を取り入れ、バイオインフォマティクス技術を駆使して、DKD及び腎硬化症を精緻に層別化し、予後予測指標、重症化阻止法の確立を目指す。
研究目的:
1)DKD,CKD・腎硬化症の予後を規定する遺伝的要因および多彩な環境・生活習慣関連要因をゲノム解析、マルチオミックス解析で解明し、2)最新の医療ICT技術・バイオインフォマティクスを駆使して、腎機能予後・重症化を精緻に予測し、疾患を層別化する方法論を構築し、3)予後予測の指標、予後不良群を識別するマーカーを確立し医療に実装する、4)腎臓病薬の標的パスウェイ・開発シーズを提供し、5)DKD・CKDの重症化抑制法を構築し、透析患者減少、予後改善を実現する、ことにある。
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